その指に触れて

「相変わらずぶっこんでくるね」

「じゃあ、今付き合いなさいよ。だったら、関わらずにはいられないでしょ」

「……万梨ちゃん」


遥斗はわずかに苦笑する。


「そんな、迫らないでよ」


遥斗があたしの肩を押したことで、あたしはようやく遥斗に体ごと迫っていたことに気づいた。


いかん、無意識にやってた……。


「言っとくけど、万梨ちゃんと付き合う気もない」


遥斗は真顔になった。


「なんで?」

「それこそ受験の邪魔」

「……まあね」

「それに」


遥斗がふと口をつぐむ。


「……それに?」


あたしが首を傾げると、遥斗はリュックを抱えて立ち上がる。


「帰るの?」

「テスト勉強」


一言そう言って、あたしを一瞥した遥斗が口を開いた。


「万梨ちゃんのことは、恋愛対象として見てないから」


……最後の最後に残酷なことを言ってのけた。