その指に触れて

「まあ、隣のクラスなんだから、会おうと思えばいつでも会えるわけだしね。教室に毎日押しかけるよ」


あたしは五組で、実は遥斗のクラスと隣だと今更気づいた。


「万梨ちゃんって」


遥斗が口元を抑えて笑いを漏らす。


「何?」

「万梨ちゃんって、積極的なの? 謙虚なの?」

「何それ」

「だってさ、俺の受験には邪魔しないって言っときながら、すぐ会えるからとか言っちゃってさ」

「あえてどっちも」

「俺、もう万梨ちゃんと関わる気ないよ」


途端に、あたし達を取り巻く空気が変わった。


笑いが、あたしの口元からも喉からも消えていく。


「隣のクラスなのに?」

「そんなの、関わんなければなんてことないでしょ」


あたしは動揺していた。何か喋りたいのに、口から言葉が出ない。


「……受験に対して本気ってこと? それとも、あたしともう関わりたくないってこと?」


あたしの口からやっと出た言葉は、遥斗に結論を言わせるものだった。


いくらあたしでも、そんな結論を急に聞くのは予想外だった。