その指に触れて

「まあ、ずっと行きたいって思ってるし、今の実力じゃまだまだだから、これからは勉強に専念しようと思って」

「ふうん」

「あれ、止めないの?」

「なんで?」

「俺と会えなくなるよ」


にっこり笑う遥斗から目を逸らす。


……若干S入ってない?


「遥斗の人生は遥斗のものでしょ。部外者がとやかく言うもんじゃない」

「随分ばっさり切るんだね」

「あたしはね、遥斗、好きな人とべったりべたべたしたいわけじゃないの。お互い自立できなくて、どちらかが頼ってばかりじゃどんなカップルだって長続きしないし。あたしは遥斗が思う最善の人生を歩って欲しい。そこにあたしがいれば一番いいけど、遥斗の人生を壊してまで一緒にいれるほどあたしにはそんな価値はない」

「大人だね」

「臆病なだけだよ」


自分がどれだけ最低な人間か、わかっているから言えることなのだろうか。


今さえよければそれでいい。学生にそんな言葉は通用しない。


あたし達はこれから生きていかなければならない。そのためには遥斗にとって大学受験は重要な意味を成すし、あたしはそれを邪魔してはいけないのだ。