その指に触れて

「もしかして照れてるとか?」

「何のこと?」


絶対わざとだ……。


「元カノ、ドSって言ってたよね。てことはやられたの?」

「万梨ちゃん、発言が不謹慎すぎるよ。確かに俺は肉食ではないよ。他の男よりそういう欲は少ない方かもしれないし」

「あ、認めた。ていうか、欲がないってやばくない? あんた、お情けで元カノを受け入れたの? うわ、最低」

「違うよ! それはちゃんと性欲で抱いたよ!」


遥斗があたしを見ながら大声を上げた。


こんなに取り乱すのは珍しい。


「……あんたの方がよっぽど不謹慎だと思うけど」


はっとした遥斗は「ああ……」と頭を抱えた。


「もう、なんてこと言わすんだよ、万梨ちゃん」

「言ったのはあんたでしょ。そうか、遥斗にも性欲あるのか」

「普通の人はあると思うけど」


自分のこと普通だって思ってんだ。


まあ、遥斗も普通の男だったってわかってよかったけど。


「何がいいの?」


遥斗は再びスケッチブックの手を動かした。