その指に触れて

「俺なんて話すほどのことしてないよ」


遥斗はなんてことないなんて感じで言いのけた。


「またまたあ。そういうことを言う人に限ってけっこうやってんだから。ていうか、童貞卒業した時点でけっこうなことしてるよ」

「万梨ちゃん、ここ学校なんだから、童貞とか軽々しく口にするんじゃないの」

「じゃあどこならいいの? あんたん家にでも押しかける?」

「なんで俺なの……。最近の高校生けっこうやってるよ。俺なんて普通だよ」

「じゃあ、まだ処女のあたしは普通じゃないんだ」

「違うって。ていうか万梨ちゃん、だからそういうことを軽々しく口にしないでって」

「彼氏彼女できたからって、高校生みんなするわけじゃないし。現にあたしは三人も断り続けてるわけだし」

「三人も断ってきたの!? 万梨ちゃんの根性に屈服するよ」

「あたし、遥斗にならいいと思ってるけど」

「万梨ちゃん、今度はそこの花瓶取って。ひまわりの方」

「九月の終わりにまだ咲いてるもんなんだね」

「今年は暑いからね。次は彼岸花とか萩かな」

「お墓参り行くみたい……」


ていうか、また流されたし。