その指に触れて

晃彦は人懐っこくて、憎みたくても憎めない種族だ。


それに、この顔で頼まれたら断れない。


あたしが拒否るまで友達みたいなカップルだったあたし達は、別れても嫌いになることはなかった。


おかしいよね。浮気までされたのに。


後々一番めんどくさいタイプだ。


「……あのさ、万梨子」

「何?」

「聞いて欲しいことが、あるんだけど」

「元サヤは問題外」

「俺もそれは無理。相談があるんだ」

「……何?」

「ここでは無理。明日でいいから、時間開けてもらえる?」


めんどくさいというのはこのことだ。


頼まれたら断れない。


眉尻を下げて、浮かない顔をする晃彦を見ると、どうしたのかと気になってしまう。


放っておけない。相談に乗ってあげたくなる。


「……別にいいけど」


別に未練があるわけではない。ただ、嫌いになれないのだ。