その指に触れて

晃彦とは半年ちょっとの付き合いだった。


ひょんなことから隣のクラスにいた晃彦とメールを始めたのは一年の初冬だった。


その時あたしは二番目の元カレと別れたばかりで、少し寂しかったのだと思う。


人は弱まっている時に優しくされると簡単に落ちる生き物。あたしはまんまとそれにハマった。


言っとくけど、晃彦は狙ってその時期にあたしと知り合ったわけではない。アプローチしたのはあたしの方からだったし、晃彦はあたしと付き合うまで彼氏がいたと知らなかった。


晃彦にとっては至極当然のことをしたまでだった。たまたま彼女がいない時期にメールがきたからそれに答えて、好きだと告白されたからじゃあ付き合ってみるかと思っただけの話。


付き合い始めて二ヶ月までは健全なカップルだった。手を繋いで、キスをして、学校で話す。晃彦が気さくで人懐っこいからあたし達は友達みたいなカップルだった。それが、晃彦の本当の姿の頭角を現し始めたのは三ヶ月記念日。晃彦の家に呼ばれた時のこと。