今回も、少し度が過ぎて、凛が怖くなっただけだ。
時間が経てば、私を思いだして私のところに帰ってくるさ。
このことを知っているのは、私だけなのだから。

…おや、外が騒がしい。
警察が来たのだろう。もう、行かなくては。
凛、また会おうね。
パパは、待ってるからね。




――――病室


「…言えません。私、先生にまだ嫌われたくない…」

凛は、俯いたままそう言った。

「…わかった。でも…そんな簡単に、自分の生徒を嫌いになったりするはずないだろう。言いたくなったら言いなさい」 
「…はい」

本当は、教えてほしかった。
嫌でも聞くつもりだった。
でもなぜかそれ以上聞く気になれなかった。

「…先生は、私のことなんかすっかり忘れてたんじゃないかって思ってました。だから昨日来てくれたとき、まだ私、先生の生徒なんだって思えて、嬉しかった」

凛が、にっこりと笑った。
胸がどくんと大きく鳴った。