「竹内くん、仕事、」

たどたどしく言葉を繋ぐ自分が情けない。
あれからどれくらい年月が経ってるのよ、自分。


「美波、お腹空かない?」

「ぇ、?は?」

戸惑う私の腕をがっちり掴んだ彼はニヤリと笑って拒否権なんてあると思うなよ、みたいなオーラで言う。

「なに食べたい?」

「…とびきり美味しいもの」


そうだった、彼との思い出に絆されてる場合じゃなかった。


美しく、微笑む彼は

お腹の中にはとんでもない悪魔が住んでたこと

どうして、忘れてたんだろう。


いちばんのこいびとは、

いちばんのてんてき、

であったこと。