瀬戸川 蛍は、転入生だった。美波たちのいるクラスへと入ってきた。
コツコツ・・・
美波はアパートへ帰る途中だった。もちろん、親族などいないので、一人で住んでいた。
誰もいない静かな所へ帰る。誰かいないかな・・。そんなありえないことを思いながら、
中へ入った。今日、蛍という名前を久しぶりに聞いたせいか、ほんの少し感情が戻った
ように思えた。すると、美波は引き出しをあけた。
「・・・蛍・・」
美波が取り出したのは朝顔の押し花だった。別れる前に、一緒だよってお揃いで作ったもの
だった。
「元気にしてるかな・・蛍・・。ああ、どうして離れ離れになったのよ。うっ。」
とめどなく涙が流れた。泣いて、泣いて泣きじゃくった。もし、あの時父親と母親が
とっくに別れていたら・・・。
悔しくて悔しくて辛かった。自分は護衛のために父親を刺したのに・・・。
「ん・・?」
いつの間にか美波は寝ていた。疲れ果てたのだろう。


