深紅に染めて(仮)



着替えて幹事室に行くと、竜しかいなかった。


「竜、おはよ」


「あ、あぁ名月か。
はよ、紅葉かと思ったよ」


「竜でも見間違えるんだ」


からかうみたいに言ったら、竜が真面目な顔をした。


「アイツの過去、聞いたんだよな?」


「…うん」


「俺さ、一回泉に会った事あんだよ。

その時、泉から言われたんだ。
"紅葉を痛め付けていいのは私だけだから"って」


グッと竜が拳に力を入れているのがわかった。


「俺は馬鹿だからさ、滅多に人を怖ぇなんて思わねぇんだけど。

泉の事見た瞬間に『怖ぇ』って思った」


竜はガンッと壁を殴った。


凹んだ壁が、竜の気持ちをダイレクトにあたしに伝える。