「…ありがとうございます。あたしっ…これで失礼します。」
 
 
少女は、深く礼をして、急いで歩き始めた。
 
 
 
「ちょっと、待ってくれ!」
 
 
ずっと黙って居た男性が、いきなり少女を引きとめた。
 
 
「…あの、何ですか?」
 
 
 
少女は立ち止まり、後ろを振り返った。
 
 
 
「…是奇と、どういう関係だったのかは知らないが……
 
 
これからもあの子を…
 
是奇のことを、忘れないで居てやってくれないか……?
 
 
記憶の中に、残しててやってくれないか……?」
 
 
 
男性は、大きな声で堂々と、でもどこか不安そうに言った。
 
 
 
「はい…!喜んで。」
 
 
少女は満面の笑みを見せて、その場を去った。