「明日の果て──って、なんだと思う?」

 おもむろに訊いてみた。

「それは人により異なるものだ」

 死であったり、成功であったり、新たなる自身であったり──

「そうか」

 果てなんて、どこにもないってことか。

 地球も宇宙も、真っ直ぐ進めば同じ場所に辿り着く。

「ポアンカレ予想、だっけ」

「よく知っている」

 感心するように小さく笑んだ。

「ホントはどうなの?」

「それは自分の目で確かめろ」

 デイトリアが発して右腕を流すと、剛は宙に浮く感覚に目を丸くした。

 遠ざかる自分の姿をしばらく見つめて、何かを振り切るように一度、瞼を閉じて視線を前に移す。