ーー俺は、かずの家の前まで行って、インターホンを鳴らした。

インターホンから聞こえた声は、かずの声だった。

『たーくん、どうしたの?』

インターホンからの声だからかも知れないけど、かずの声は少し鼻声だった。

「大事な話がある、親爺さんは?」

『待ってて』

その一言でインターホンから声が聞こえなくなった。

その時、ドアが開いた。

「親爺さん、頼みたい事があるんだ。
最後のお願い、かずを2時間だけ、借りていいですか?」

「引っ越しの事きいたんだな。」

「すいません、ここだけは譲れないんです。お願いします。」

俺は、深々と頭を下げた。

「分かった。一葉をよろしくな。」

「はい!ありがとうございます!」

俺は、かずの手を引いて、マンションの下に行き、自転車で二人乗りした。

その前に、かずにココアを渡した。

俺は、自転車を走らせた。

不思議なことに、自転車は凄く軽かっ
た。かずの重みさえ感じなかった。

俺は、目的地の宝石屋へ着いた。

俺とかずは、店の中に入った。

そうすると、仲の良い店長が出て来た。

「大義君のお姉さんから、聞いたよ。
大義は、多分ここにくるから、指輪を半額で売ってやってくれって。さっき電話で。」

姉は、世話焼きだな、と思った。

「前に頼んだやつ下さい。ペアリングなんで、3000ですよね?」

「1500円でいいよ。」

店長は、綺麗に笑った。

「ありがとうございます。」

そう言って、指輪の箱を持ち、かずの所へ行った。

「かず、またしてゴメンな。」

「ううん、全然大丈夫。」

かずは、こうして笑っているけど、本当は、不安なんだよな?

それでも、やっぱり・・・かずは、笑続けた。