「雅巳君は若いのに色々知ってるんだね。」


「環境じゃない?夜の仕事をしていると色々教えてくれるから。」



お客とか先輩とかと言いながらタバコを持ちながら運転する彼の話を聞くが、昔から人間観察が得意なのか、



「聞いた話だけでそんな言い方にはならないと思う。よっぽど嘘が上手いか、体験したかのどっちかじゃない?」



「………………。」







相づちをしろと注意したのは雅巳君なのに、彼が黙りこむ。


マズイ事を言ったつもりは無い。


会話の中の空気みたいな内容のつもりだったが、




「家どこ?送るよ?疲れたでしょ?」




私を早く帰そうとするその行動にまたしても理解に苦しむ。
いつのまにか吸っていたタバコは消され、途切れない会話は無言に変わっていた。




「今度の打ち合わせはいつ?」



「………………。」



雅巳君が喋らなくなったのは、私が彼の持つ地雷を踏んでいたんだろう。