切ったばかりの髪の毛、ブローしますか?と美容師の言葉に迷いながらもお願いしますと言って良かった。



最近見向きもしなかったドレッサーに座り、鏡を開いて目の下のクマと乾いた肌が間近で写し出されて、我ながら女子力の欠片も無い顔に慌てる気力すら湧かない。



「今更パックしてもね……。」



椅子に座って半ば諦めてコットンに乳液を染み込ませ、おでこから下にへと肌に馴染ませていく。



スーっと化粧品が徐々に肌に塗っていくが、時おり香る化粧品独特の匂いにまた過去に戻る自分がいた。



お肌の曲がり角と言われて増えていった少し値の張る乳液やら保湿液。
またそんなの買ってと、今此処には居ない優ちゃんの声が遠くで聞こえる。



だっておばちゃんになる頃にあの時してればって後悔したくないでしょ?



おばちゃんになってもちゃんと好きだから。




アイラインが引けないよ。


優ちゃん、貴方の声が頭から離れない。