10分後と言われたのに、既に本屋の入り口で彼が来てくれるのを待つと五分も経たない内に見覚えのある車が駐車場に入ってきて、私の前に停まる。
でも間違えたら嫌なので車の持ち主の様子を伺うと、運転席の窓が下がり雅巳君の顔が見えて私はついお母さんの帰りを待つ子供のような笑顔で彼に近づいた。
「乗って。早く帰ろう。」
彼も表情は、笑顔でも無表情でもない、でもさっき一緒にいた女性といる仮面の顔はしていない。
私はバックを膝の上に置き、助手席に座って本物の雅巳君の香水の匂いを感じ、つい泣きそうになる。
車内に流れてる車の音楽は、少し前に流行った私でも知ってる曲。
彼はその曲を口ずさみ、私も心の中でその曲を唄っていた。
さっき一度行ったマンションの敷地内に入り、車を駐車場に停めて車から降りて歩いていると持っていたバックを雅巳君が持ってくれる。
「重いね。家出でもしたの?」
「いいえ。上京したの。」
「上京したのは何時頃?」
「夕方前かな。」
「本当にルイの行動はたまに苛立ちを感じるよ。そんなに僕は必要ないの?」
「………必要だから来たじゃない。」
「………フゥ。」
入り口の自動ドアをボタンの鍵で開け、直ぐ横にあるエレベーターに乗って五階に上がっていく。
密室のエレベーターの中を雅巳君と並び、扉が
開くのを無言で待つ。



