タクシーが到着し、店員にお礼を言って紙に書いてあった住所を運転手に伝え、治まらない緊張を抱えて目的地に着くのをひたすら待つ。
どの景色も見たことがない。
だけど何故だかとても安心感を与えてくれる。
この街に雅巳君が住んでいるんだ。
この道を雅巳君は通っているんだ。
彼がこの街の空気を吸って生きているんだ。
この街の下、今同じ空気を吸っているんだ。
15分程度車に揺られ、言われた住所のマンションに着く。
ホテルのようなマンションの入り口だが、鍵が無くても入れるのだろうか。
入り口に自動ドアと部屋の番号を入力する機械が設置しており、紙に書いてあった部屋の番号の数字を押してインターホンのボタンを押す。
しかし反応が無く、自動ドアが開かない。
やっぱりまだ帰っていないのかな。ていうか、今日はあの女性と一緒にいる約束をしていたのに今こんな時間に帰ってくるわけがない。
あぁ、完全に舞い上がって先走ってしまった。
しかも店が終わったらって、雅巳君は今日仕事を匂わす発言もしていたのに。
仕方ない。
待つのは構わない。
でも此処に何時間もいたらそれこそ怪しい。
一応目印を覚えながら、近くをグルッと回ろうとした。



