「そんなに潰れるくらい彼を愛してた?」
私のまだ洗っていない髪の毛を濡れた手でなぞりながら問いかける。
「………洗ってないから汚いよ。」
質問の答えより、汚い部分を触られてることの方が気になった。
「答えないの?」
髪の毛を触る手は今度は私の肩にお湯をサラサラかけていく。
お風呂に入っていても、肩は出ていて少しひんやりとしているのを彼は気付いたんだろう。
「愛してたけど、もう戻れない現実も受け止めた。」
死にたい衝動はもう出てこない。だけどそれは言っちゃいけない。きっと雅巳君は嫌がるでしょ?やっぱりねって、冷めた目で私を見るんでしょ?
ダークな貴方の部分の中から、甘いお菓子みたいに優しい雰囲気を出すのも知ってしまった。
ただ流されてるのはわかる。
情けないよね。君に嫌われることが恐くなっている。
「ルイより不幸な人は沢山いるよ。」
「わかってるよ。」
世に比べたら私の絶望なんて小さすぎて比べ物にならないなんて知っている。
わかってる、それだけで潰れる女は笑えるんでしょ。
雅巳君は頭を洗うと言って一度浴槽から出て私は広くなった浴槽に一人ぼんやりぬるま湯に浸かる。
いつも一人で入っていたのに、今度は急にこの浴槽が広く感じる。



