スーパーに入り、カートにかごを乗せて押す準備をすると雅巳君がさりげなく交代してカートを押してくれる。
「雅巳君は何食べたい?」
「ん~好き嫌い多いんだよね。」
「多そう…だからこんなガリガリなのよ。」
「鶏ガラスープだね。ラーメンにしようか、僕の出し汁で。」
「やだよ。」
と、スーパーの中をじゃれあいながら楽しく回っていく。
悩みも何も無さそうな明日への希望に満ちた普通の恋人同士みたい。でも私達は友達以下の関係なんだ。
錯覚なのもわかっているが、彼の放つ言葉や行動で上がったり下がったりするのも事実だ。
その浮き沈みする感情が何故か思う。
幸せというのはこんな感じだったっけ。
愛しい人は違くとも、切なくなる瞬間は違うのに。
「ルイ、僕グラタン食べたい。」
今こうしている刹那で、君が嫌がることをきっと私はしてしまいそう。
君を必要とする理由が変わったら、きっと貴方は居なくなるんだろうね。