殺した理由

9月19日。
四ノ宮商店街。


「ねぇ!あんた!」

「フラフラして、どうしたんだい!お腹空いたのかい?」

穏やかな表情で穏やかに笑っていた。

皺があり、目が垂れている。

高齢の女性が前に立っていた。

その右腕にはビニール袋が掛かっている。

「?あんたは?誰だ?」

「あんたー、愛想がないねぇ」

優しい声で高齢の女性は喋った。

イラつきも感じていないような様子だ。

そして、高齢の女性は一拍置き、こう聞いた。

「あんた、名前は?何て言うんだい?」

そう聞かれて、一人の青年は躊躇(ちゅうちょ)した。

沈黙。

だが、高齢の女性は穏やかに笑っていた。

口を開く。

静かに空気を吸う。

そして、発した。

「・・・俺の名前は・・・、吉木利津(よしきりつ)。」

「へぇ!あんたいい名前持ってんじゃないかい!じゃあ、あたしも名前を言おうかね。」

「斎藤静江(さいとうしずえ)だよ。よろしくね」

「ところで、あんた!利津!あたしの家に来るかい?その様子じゃあ、行くところもないんだろ?」

静江はゆっくりと力こもった声で喋った。

一人の青年。いや、利津は吃驚したような目で静江を見た。

少し混乱しているようだ。

まるで、「こんな、俺にも親切にしてくれる奴がいるのか」と言う目で。

「どうすんだい?まぁ、ゆっくり考えておくれよ」

「・・・行く。行くよ・・・。静江の家に行く」

「まあまあ、急に呼び捨てなんて、面白い子だねぇ・・・、まぁ、行こうかね?」

「ほら」

静江は利津に手を出した。

どうやら手を繋ごうという、動作のようだ。

その手に利津は手を取った。

その行動で、静江は満面の笑みを浮かべた。

静江の手は、シワシワな手だった。