「ひくっ、うぅ」


わたしは、山田とユウ太くんの感動のシーンで脇役を演じた後、一般には開かれていないもう一つの中庭で、一人小さく泣いていた。


規模はそんなに大きくないが、一年中花の咲き乱れる美しいこの場所は、わたしのお気に入りだった。


花の間で泣いていると、


「ねぇ、花が泣いてるんだけど…」


「…なんかとり憑いてるのかしら?」


とほかの女の子たちはドン引いてどこかに行ってしまった。


好都合だ。


泣き顔を見られたくない。


「ひっく、うわーーーん‼」


誰もいないのをいいことに、わたしはバンシーの如く泣き喚いた。


「馬鹿、山田のバカぁ、アホ担任のくせにっ」


めちゃくちゃなことをいいながらも、涙は止まらなかった。


「ミミ子ちゃん?」


ぴくっ


誰もいないと思ってたのに、いきなり男の子の声が降ってきて、わたしは小動物のようにちぢこまった。


でも、声の主はなかなか去ろうとしない。


「どこ?ミミ子ちゃん」


どこかすがるようなその声に、わたしはおずおずと顔をだした。


「あ…」


そこには、わたしと同じ泣き顔をしたユウ太くんが立っていた。


色とりどりの花がユウ太くんをとり囲んでいた。