俺は地面に座りこんだままボーッとし始めたヒロ人の隣に腰を下ろした。


今は寂しい桜の枝が、風にゆらゆら揺れている。


「ヒロ人ぉ、さっきは怖かったね。」

「うん……おもにユウ太の豹変っぷりがね。」

余計なとこは聞き流す。

「俺の足にしがみついてたの、何だったんだろ。」


「ミミ子ちゃんだよ。」


「……へ?」


俺は驚いてヒロ人の顔をまじまじ見た。


ぱちぱちと目をしばたたかせる。


「ミミ子ちゃんだったの?」


「うん。ひょっとこのお面かぶってたけど、あのサイズ観はミミ子ちゃんだよ。」

ヒロ人の変態くさい言い方はともかくとして、

……恐怖の館でひょっとこのお面?


どうもあの子の感性は、凡人には理解し得ないところにあるらしい。


「ユウ太にあご蹴られて、痛そうにしてたなぁ。」


ヒロ人がのんびりと言った。


「俺、ミミ子ちゃんのあご蹴ったのか⁈」

俺はびっくりして飛びはねた。


「それを早く言えよ。」


「わざとじゃなかったの?」


「んな訳あるかい。」


「つか覚えてないんだ。」


「っ…うーん、何となくかかとに感触が残っているような?」


ぐえっとカエルの声をだしたのはミミ子ちゃんだったのか。