「あーあ、行くって言っちゃった。」


俺は家に帰ると、冷たい廊下に座り込んでため息をついた。


できれば会いたくないのは本当だが、別にお母さんがいるのはさして問題ではない。


問題なのはもう一人の方だ。


高一の夏、お母さんにあの話をされて以来会っていない。


別に会いたくないわけではない。


でも、憂鬱だ。


姿があったら回れ右をすればいいと自分をなだめる。


頭の中からそのことを追い払って、俺は今日という日を反芻した。


騒がしいやら気まずいやらよくわからない一日だった。


脳裏に、お父さんのことが好きなんだね、と言った時のミミ子ちゃんの嬉しそうな笑顔が浮かぶ。


きゅん、と胸が痛くなって、俺はうつぶせに倒れた。