「ご、ごめん。急に怖い声だしちゃって。」


ミミ子ちゃんは無表情で俺の顔をじっと見つめた。


目の端にじわりと涙が浮かぶ。


「ミミ子ちゃん⁈」



俺をぎょっとしてすっとんきょうな声を上げた。


固まったいるミミ子ちゃんをアユ芽ちゃんがそっと抱き寄せた。


俺に向かってにこりと笑う。


「ミミ子は泣き虫だから。」


「ごめん。」


ミミ子ちゃんがアユ芽ちゃんの腕の中から顔をあげて、ぼそりと謝った。


声には全然涙の影がない。


顔もしゃんとしていて、突発的にじわりときただけらしい。



俺はほっと息をついた。


アユ芽ちゃんがミミ子ちゃんの背中をさすりながら首をかしげて俺にたずねた。


「文化祭に来れないのは、外ではお母さんに会いたくないから?」


俺はもじもじとうなづいた。


「うん。」


正確に言えば違うけど、まちがいではない。

「そっかぁ。でもね、わたしね。」


仏頂面のミミ子ちゃんの隣でアユ芽ちゃんが満面の笑みを浮かべた。


女神降臨といっても過言ではない美しさに俺は息をのむ。


アユ芽ちゃんは恥らうように言った。


「わたしは、ユウ太くんに来て欲しいなぁ~。」


「はい、行きます。」


勝手に口が動いた。


「ユウ太、良いのか?」


横でヒロ人がびっくりしているのも気づかず、俺はこくりとうなづいた。