「それってまさか、戸波先生?」


わたしの頭に、熱心で口うるさい女教師の顔が浮かんだ。



ついでユウ太くんの顔をまじまじと見つめた。



どちらかというとほっそりした顔だちの戸波先生と、いちご大福みたいな可愛い可愛いユウ太くん。


似てない、明らかに似てない。


「たぶん、そうだよ。」


ユウ太くんが観念したようにうなづいた。

「似てないねぇ。」


アユ芽ちゃんがなぜか感心したように言った。


「うん、よく言われる。」


ユウ太くんは苦笑いながら言った。


「じゃあ、ユウ太くんはお父さん似なんだ。」


わたしはにこっとすると、


ユウ太くんの頬が少し引きつった気がした。

「どうかな、それも言われないんだ。あー、でも」


ユウ太くんは、


「困った顔したら似てるって言われたなぁ。」

と少し頬を染めて笑った。


お父さんに似てるって言われるのが嬉しいんだな。


今時の高校生にはめずらしい。


「お父さんのこと、大好きなんだね。」


わたしもお父さんが大好きだから、何の裏もなく心からそう言った。


なのに、


「まさか、大嫌いだよ。」


ユウ太くんは吐き捨てた。


ああ、毒だ。


こんな真っ直ぐな子の中にも毒がある。


ユウ太くんの顔にうかぶ嫌悪のようなものを見て、わたしは何も言えなくなってしまった。