「ユウ太」

「はい」

振りかえるとサラサラヘアのイケメンが
無表情で立っていた。

「抱きついていいか。」

「…いやだ」

イケメンがショボーンとうなだれる。

俺はなんだかかわいそうになって(いつものこと)

「ちょっとだけなら…」

と言ってしまった。

イケメンはあっと言う間に回復すると、
ぎゅ~~っと抱きついてきた。

暑苦しくはない。

なぜなら彼には体臭というものが存在しないからだ。(これは男の集団が暑苦しいのは体温のせいではなく、あのくっさい体臭に原因があると考える俺の持論による。)

「はぁー、なごむのぉ」

一応、友として弁解しておくが、彼は変態ではない。

宇宙人である。

であるから、地球人の迷惑など彼は考えない。

ちらちらと変な目で見られても、(俺まで変な目で見られても)彼には関係のないことである。

ころろろろん、と変な音が校舎中に響きわたった。

ちなみに言っておくが、この音は宇宙人が通信している音ではない。

我が和誠男子高等学校のチャイムの音だ。

「ほれ、ヒロ人。チャイム鳴った。離れろ。」

「いやだ」

「どかんかい」

宇宙人ならぬヒロ人こと風見博人は、かかとに一発蹴りをおみまいすると、イヒャーとか言いながら自分の席に飛んでった。