「ヒロ人は良い奴だよ。でもちょっとね。まぁ、いろいろ、うっとね…」


ユウ太くんはごにょごにょと何か言い続けていたが、わたしは聞いていなかった。


なんだ、今のは。


ユウ太くんが困った顔した時、あり得ない人物の面影がよぎった。


わたしはしばし惚けた。


大嫌いな阿呆、わたしが年がら年中困った顔をさせているあの人。


お返しとばかりにわたしをちびっ子呼ばわりしてからかうあの人。


まさか、兄弟とか?……親子とか?


「ミミ子ちゃん?」


ユウ太くんの声にはっと顔を上げた。


「…ミミ子ちゃんってけっこう飛んでっちゃうね。」


おかしそうに笑うユウ太くんに、内心むッとしながら、


「て、てへ?」


と可愛らしく返してみた。


うわっ、我ながらキショッ。


わたしはナイナイと自分に言い聞かせた。

だいたい苗字が違う。


ちらっと似ている部分が見えたからと言っていきなり、親子なんじゃないかと疑った自分のぶっ飛んだ思考に思わず苦笑がもれた。