放課後、わたしはへばりついてくるアユ芽ちゃんを放置して、一人昨日の本屋へ向かった。


変態と例のちびっ子少年のせいで、愛しの江口華未子先生の新刊を買い損ねていたのだ。


ああ、また出逢えたね。


と歓喜しながらわたしは漫画をうやうやしく手にとった。


「あ」


今まさに接吻をかわさんと唇をとがらせていたわたしは間抜けな「あ」という息もれが聞こえて首を横に向けた。


「う」


わたしのとがった口からも間抜けな息がもれた。


そこには阿呆面をした愛くるしい高校生男子がわたしを凝視して立ち尽くしていた。


まごうことなき昨日のちびっ子だ。


「君、昨日の子だよね。」

少年が恥らうように頬を染めて話しかけてきた。

そう、わたしは昨日の子です。あなたが見惚れていた変態の連れです。


「はいっ、えっと、昨日はごめんなさい。友人がいきなりあんなこと。」


「いや、いいんだよ。そんな。」


まぁ、美少女だからな。


「本当にごめんね。あのよかったらこれからどっかでお茶でもしない?お詫びするから。」


「あ、うん。そんなお詫びなんて良いんだけど、でも…あの…」


もちろん、わたしがあなたに詫びをいれる義理なんてない。だってわたし悪くないもの。

でもまぁ、下心はお互いさまでしょう。


「昨日の背の高い子にもう一回会いたいなぁ、なんて。」


わたしは君の連れの美少年に会いたいなぁ。


「アユ芽ちゃんに会いたいの?うん、わかった。メールしてみる。」


そう返事すると、少年はあからさまに嬉しそうな顔をした。