「ふふっ」


わたしはしょぼんとしているユウ太くんがおかしくて、小さく笑った。


するとユウ太くんの顔が、何かに耐えるように歪んだ、と思ったら、いきなり抱きついてきた。


さっきのわたしのごとく。


「ミミ子ちゃん、かわいいっ、大好きっ‼」


「いやいや、かわいいのは君のほうですがな。」


わたしは冷静にユウ太くんを受け止めて、妙ななまりで言葉を返した。


「絶対幸せにするからっっ‼」


……早くも結婚する気ですかいな。


ユウ太くんってやっぱおもしろい。


あらためて、しみじみ思った。


わたしはユウ太くんをぐいっと引き離すと、立ち上がってのびをした。


「わたし、帰る」


「ええっ」


何を勘違いしたのか、ユウ太くんは大慌てで、


「ごめん、いきなり抱きついてごめん、変態チックなこと言ってごめんっ」


とごめんを連発した。


「いや、べつに。」


真性の変態の生態を知り尽くしているから、あんぐらいへでもない。


「一緒に帰る、よね。」


わたしはユウ太くんににっこりした。


途端にユウ太くんの表情がぱぁぁっと輝く。


「うんっ」


元気いっぱい返事をすると、はたと気づいたのか、どうしよう、みたいな感じでユウ太くんはそわそわし始めた。


恥ずかしそうなユウ太くんに、わたしは、我ながら実に男らしいが、右手を差し出した。


ユウ太くんは頬を染めて、おずおずとわたしの右手に自分の左手をすべりこませる。


夕方の赤に染まるショッピングモールを、わたしたちは歩きだした。


買い物中の奥様なんかが、わたしたちを見てクスクス笑う。


人々の目にはませた小学生のカップルにでも見えているのだろう。


わたしとユウ太くんは、目を合わせて肩をすくめた。


「失礼な」


「失礼だよね」


二人して拗ねてみせながらも、わたしは愉快で仕方がなかった。