「……好きって、どんな好き?」


「ミミ子ちゃんに恋してるってこと。」


「……言ってて恥ずかしくない?」


「ぷっ、ミミ子ちゃんはひどいなぁ」


ユウ太くんは失礼にもふきだすと、クスクス笑いはじめた。


なんとか真剣な顔に戻ろうとしているらしいが、わけが分かりなくて憮然としているわたしを見て、またふきだす。


わたしはふぅ、とため息をついた。


「わたしに恋してるから、わたしの絵を描いてるの?」


尋ねると、ユウ太くんはようやく正気に戻って、


「うんっ」


と元気よくうなづいた。


そして、わたしを大きな瞳でじっと見つめる。


…なんか反応返せってこと?


わたしは膝の上に手をぎゅっと握って言った。


「わたしもユウ太くんが好き、大好き。」


「うん」


「あのね……わたしが恋してるのはユウ太くんじゃないよ。」


「……うん」


「だけどっ」


わたしは身を乗り出した。


そして気がついたらユウ太くんに飛びついていた。


「うわぁっ」


ユウ太くんはわたしを支えきれなくて床に倒れこむ。


どうしても伝えたい、知って欲しいという想いが前に前に出て、自分ではどうしようもない。


わたしはユウ太くんの肩に顔をうずめた。

「山田のことより、ユウ太くんのが好き。恋じゃないけど、きっと、今のわたしには一番大切な気持ちなの。」


ユウ太くんに出会えてよかったと心のそこから思う。


出会ってまだほんの少ししかたってないけど、わたしの中に、なくてはならない人になってる。


ユウ太くんといると安心する。


甘えることが、ゆるされてる気がする。


ユウ太くんは、やわらかな光だ。


無条件に、どうしようもないわたしを包みこんでくれる。


「だから……」


わたしはユウ太くんの瞳を見つめた。


「そばにいてほしい。ずっと。」


ユウ太くんは目をまん丸く見開いて、マヌケな声で言った。


「プロポーズみたい」


思わずパシッと肩をはたいた。


「言っとくけど、プロポーズじゃないから。」


「ふふ、わかってるよ」


「君のマヌケな父上と同格のとこにわたしをおかないでちょうだい。」


「……ひどいなぁ」


わたしたちは床に座り直した。


なぜか、どちらも正座。


「えっと、つまりさ、俺たち付き合えるってこと?」


ユウ太くんが戸惑いながらわたしに確認した。


「えっ……わかんない。」


ユウ太くんはわたしのことが好きだと言った。


で、わたしはユウ太くんに、そばにずっといてほしいと言った。


この場合は普通付き合うんだろうか。


「じゃあ、えっと……」


ユウ太くんが顔を真っ赤にして言った。


「俺と付き合ってください。」


そして何故か頭をさげる(土下座?)。


「よ、よろしくお願いします。」


そしてわたしも何故か頭を下げた。


正座して向き合い、低頭して交際スタート。


……わたしたちらし過ぎて泣けてくる。