「戸波先生、うんってゆうかなぁ。頑固だからなぁ。」


「そう、うちの母上は頑固で困る。」


わたしの涙がひいたところで、わたしたちは学校を離れて、二人でとぼとぼ歩いていた。


夕日で街が赤く染まっている。


今のわたしには、その情景はひどく穏やかに映った。


「ミミ子ちゃん」


ふいにユウ太くんが立ち止まった。


「な、何」


今日一番の真剣な顔に思わずたじろいだ。


ユウ太くんはぽっと頬を染めて一生懸命何かを言おうとしている。


「あ、あのね、えっと、ねぇ……」


……かわいいな、おい。


アユ芽ちゃんの気持ちが少しだけ分かる。


小さきものは愛らしきかな。


「あの、ね」


一瞬、般若のことき様相をしたかと思うと、ユウ太くんは、


「また、一緒に遊ぼうねっ」


と言ってだっと走り出した。


は……い?


わたしは唖然として、ユウ太くんの背中をしばらく見つめていた。


街中に紛れて見えなくなると、わたしは思わず笑みをこぼした。


また、一緒に遊ぼうねって、小学校の中学年以来言われてない気がする。


おもしろすぎる。


さめていた気分が少し高揚して、わたしは足取り軽く家路に向かった。