「ミミ子ちゃんの名前をちゃんと覚えてたのは覚えやすいからだよ。」


たしかに、ミミ子ちゃんの名前は覚えやすい。


それはひとえに、あのちっこくい容姿が『ミミコ』という名前の響きにぴったりフィットしているからだ。


「そっか……そうだよな。」


「そうだよ。……ねぇ、ユウ太ってもしかして…。」


「その先言うなよ。」


俺はすっとヒロ人の言葉を遮った。


その先は聞いちゃいけない気がしたから。


『山田…』


あの日のミミ子ちゃんの、涙まじりの声
を思い出す。


不敵な色を滲ませる可愛い女の子の、一途な想い。


真っ直ぐ過ぎて、はたから見れば怖いくらいの代物だ。


それを一身に受けているのは、多分…


考えたくなくて、ずっと頭のすみにどけてたのに。


分かっている。


考えるまでもない。


ミミ子ちゃんは……


ぴゅるるるるるっメールだよ‼


シリアスに思考をしていたのに、いきなり間抜けなメールの着信音が俺を現実に引き戻した。


「誰だよ。」


俺はぷうっと膨れてケータイをポケットから取り出した。


「……誰?」


ヒロ人が何かを怪しむ様に眉を眇めている。


「えっと、っ……お、母さんでしたっ」


俺は表示を見て仰天しながら、慌てて言った。


本当の送信主はヒロ人に言わないのが得策だ。


めんどくさいから。


混乱の渦中にあった思考の中でよくもまぁ、そこまで判断したものだと後で自分に感心した。