「ユウ太が話したのか?俺と戸波先生がもともと夫婦だったってこと。」



「…夫婦だったどうだったってことは言われてませんけど。戸波先生がお母さんで、山田先生が……パパだと。」


恥ずかしそうな顔がみたくてわざと『パパ』という言い方をしたのに、山田はどこか嬉しそうに微笑んだ。


「そっかぁ。」


わたしは屈辱を感じて、


「ふんっ」


なぜか鼻を鳴らした。


立派な音がした。


「お前の鼻は元気な上に高性能だな。……つか先生、鼻鳴らされるようなことしたか?」


「デレデレしてたからですよ。あ~恥ずかしい。」


わたしは小馬鹿にするような目で散々山田をねめつけた。


山田はなんとも言えない顔でわたしの視線を受け止めていたが、しばらくして


「……上松ぅ~、気はすんだかぁー」


と催促された。


「はい。聞きたいことっていうのをどうぞ。」


「あの、なぁ。」


山田はためらうようなそぶりをみせ、窓際に背中をあずけて、こちらを見た。


「ユウ太が、俺のことどんな風に思っているか知らないか。」


おきれいな顔がどこか泣きそうにゆがむ。

わたしは心にも醜い歪みがうまれる。