「………まひる……」 翔と目が合う。 あたしは思わず顔を背けた。 「……ごめん。今の、聞いてた?」 「っ!」 あたしは、首を横に振った。 「…そ。別に聞いても大丈夫なことだけど」 この数十秒の間に目の前で起こった光景に、頭がまだついていっていない。 「…で、なんかあった?」 背けた顔を下から覗き込まれ、あたしははっとして顔をあげた。 「うっ、ううん! なんでもない…!」 それだけ言って、自分の部屋に走った。