「ですから、2人だけの時は"翔さん"ではなく"翔"と呼んでください」


「えぇぇっ?!」




そっ、そんなの絶ッッッ対無理無理!!!




「敬語もやめてください」


「えぇぇぇぇっっ?!」



さらに無理です、それ!!!




「いいですね?」


「やっ、あの…っ」


「なにか異論でも?」




また顔を近づけて、妖艶に微笑む翔さん。




このままじゃ、必ずやキスされてしまう。


それはごめんです!!




「わっ、わかりました!!」



とっさにそう答えると、翔さんは離れた。




そのまま翔さ…いや、翔は机に向かった。



2人の間に流れる静かな空気。






…なんか居づらい。




「…あ…の」


「敬語はなしっつったろ」


「!!」




いや、まだ慣れないもので。


これでもあたし、女子中だったんですよ。


男子にはまだ慣れておりません。



……すいません。




「なに?」



翔は書類に目を向けたままあたしに聞く。




「紗羅ちゃんに用事があるから、行きま、じゃなくて、行くね」


「ふーん…」




えっ?

承諾してくれないの?





「毎日ここに来るならいい。まぁ、絶対来させるけどな」


「あ、ありがとう」




あたしはぺこりと一礼して、部屋を出た。