「昼は弁当?」

 私が問い掛けると、唯は満面の笑みを浮かべて頷く。

「うん。先に食べる?」

「そうだな。とりあえず食うか」

 唯の弁当は母親の手作りらしく、見た目の綺麗さにプラスして栄養バランスが考えられた愛情たっぷりの弁当だった。

 私は幼い頃――、まだ家庭が平和だった頃に遠足で母親に作ってもらった弁当を思い出して懐かしくなる。

「そういえば、昨日はろくに寝てないって言ってたけど、何してたの?」

 不意に唯が聞いてきた。

「昨日は茜んちの帰り、小学生ん時に転校してった幼なじみに偶然会ったんだよ。んで、話に夢中になってて気付いたら十二時回ってんの。片付けしたり風呂入ったりで、その後はバイト」

 私は昨日の流れを思い出しながら続ける。

「結局、寝れたの二時間位なんだよな。何で?」

「ううん。大した理由じゃないんだけど、茜の家……ね。バイトって援助交際?」

 茜の家って部分で少し顔をしかめた唯だったけど、それ以上に私は、援交って言葉に危うく飲みかけた麦茶を吹き出す所だった。

「いやいや、援交とか……。してねえよ。朝は新聞配達。ちなみに土日は飲食店もやってるよ」