宝物〜絆〜

 少し前までは好きという気持ちを伝えようとは思ってなかった。いや、今だって実際に伝えるのかと聞かれたらNOと答えると思う。

 秀人とは、今のままの関係が良いと思う自分が居るからだ。振られんのが嫌だとか、そういう感情じゃなくて、今のままの方が素で居られる気がするから。

 でも、もし秀人が他の誰かと付き合う事になったらと思うと息が詰まりそうになる。多分、素直に「おめでとう」だなんて言ってあげられない。

 明らかな自分の心境の変化に戸惑いを覚える私。

 結局のところ私は、秀人とどういう関係にある事を望んでいるんだろう? 自分でも分からなくなっていた。

「確かにまだ夫婦じゃないね。いずれなると思うけど。あっ、式は呼んでよ?」

 店長のからかう声で現実に引き戻される。

「はいはい。結婚相手が秀人だったら呼びますよ」

 自分の気持ちに翻弄されて反論したくもない気分の私は、普段だったら有り得ない返答をしてしまった。

「あれ。珍しく素直……でもないか。まっ、とりあえず式には呼んでもらえるから良っか」

 店長はニコニコしながらそう言うと、煙草の火を消して休憩室から出ていく。

 はあ。本当、私はどうしたいんだよ。

 去り行く店長を見送りながら、ため息とともに煙草の煙を吐き出した。