「そっか。無理すんなよ。って、まさか数時間後から新聞配達?」

 秀人は一瞬顔をしかめて思い付いたように聞いてきた。

「そだよ」

 私はにっこりと笑って頷く。

「そだよじゃねえよ。そういう事は早く言えっての。寝る時間ねえじゃん」

 秀人はため息混じりに突っ込んできた。

「大丈夫だよ。授業中に寝れるから」

「……なら良いけどよ。マジで無理すんなよ」

 秀人が呆れた表情で言う。

「ああ。ありがとな」

 そんな言い方をしながらも何気なく気遣ってくれてるのが嬉しくて、私は笑顔を答えた。

「ああ。こっちこそ、今日はありがと。おやすみ」

 秀人も笑顔を返してくれて、私たちは一緒に玄関に向かう。

「はぁい。おやすみ〜」

 そして玄関で秀人を見送り、片付けと洗い物を済ませて風呂に向かった。

 一人で風呂に浸かっていると今日あった色々な出来事が頭を過ぎる。

 茜、本当どうしたんだろうな。

 茜は嘘が嫌いなのに、母親に嘘ついてまで私と会いたくないって、よほど怒ってるんだよな。

――って、いかん。このまま風呂に居ると悪い方にばっか考えてしまいそうだ。とっとと出よう。

 私はもう一度、軽くシャワーで身体を流して浴室を出た。時計を見ると午前二時を表示している。

 寝ると起きれなさそうだけど、こんな中途半端な時間じゃ起きててもやることねえな。

 でも、やっぱ寝よ。なんか今日は起きてると、ろくな事を考えない。

 そんな事を考えながら布団に入ると、一瞬のうちに眠りに落ちた。