夜にバイトに入るのも三日目で少し慣れてきた頃。この日も若い男女グループや居酒屋帰りなのか既に酔っているサラリーマンなどで賑わう中、不釣り合いな客が来店した。

 こいつは確か……。

「仁美とか言ったか? 高校生がこんな時間に何してんだよ?」

 そう。香奈と一緒に居た痩せ型の女、仁美がツレと二人で来ているのだ。

 まあ私も高校生なんだけど。

「あの、神谷美咲さんですよね。この前の」

「そうだけど、私に何か用?」

 私は不思議に思いながら聞いてみた。この前はこいつ、何もしてこなかったんだよな。一体なんだろう?

「バイトって何時までですか? 終わったら少しお話させてもらいたいんですけど。五分で終わります」

 緊張した面持ちでツレの方をチラチラと見ながら話す仁美。

「バイトは二十四時まで。それまで適当に時間潰しといて。ここに居ても良いし」

 なんか訳ありっぽい気がしたから、ひとまず話を聞いてみる事にした。

「ありがとうございます。ここで待ってますね」

 仁美は安心したように、緊張で張っていた顔の筋肉を緩めて微笑む。

「ああ。んじゃ、ごゆっくり」

 私はツレの女にも一礼してその場を離れた。