考え事をしながらも秀人と雑談をし、帰路につく。

 ちなみに秀人は単車を持ってるんだけど、基本的に近場の移動は歩きらしい。

「美咲? 何かボーッとしてるけど大丈夫か? 昼間の事とか気にしてんのか?」

 どうやら上の空だったらしく、部屋の前に着くと同時に秀人が心配そうに顔を覗き込んできた。

「あっ、いや。なんでもない」

 私は慌てて返事をすると、ポケットから鍵を取り出した。

「そっか。すぐ新聞配達あんだから少しでも寝とけよ」

 秀人は深紅の髪を風に靡かせてにっこりと微笑みかけてくる。

「ああ、ありがと。じゃ、また明日な」

 私も笑顔で返した。

「ああ。またな」

 秀人の返事を聞きながら部屋の鍵を開け、部屋に入ってすぐ風呂に向かう。

 早く横になりたかったからバスタブには入らずにシャワーで済ませた。

 とにかく今日は何か疲れたな。早く寝よ。

 そんな事を考えながら髪を乾かして、すぐに眠りに就いた。

 次の日、予想通りバカ西は休んでいた。立川と秀人は思った以上に急激に仲良くなっていて微笑ましい。

 私は唯にメールした通り、昼休みに昨日の出来事を説明した。

 それから水曜日までは、何事もなく穏やかな時が流れていたのだが――。

 バイト中の予期せぬ来客で、再び暗雲が押し寄せてきた。