宝物〜絆〜

「かっ……勘弁して下さい」

 ん? 聞き間違いか? 勘弁してくれって――、やっぱ何か企んでやがんな、こいつ。

「あぁ? 何ふざけた事ヌカしてやがんだよ。茜の事さんざん傷つけといて、こんなんで許されっと思ってんのか?」

「はっ、はい。本当すみません」

 バカ西は、やけに素直に謝ってくる。どういう事だよ、一体。何か企んでる訳じゃねえのか?

「何のつもりだよ? だいたい私に謝っても意味ねえんだよ。そもそもテメェがムカついてんのは私だろ? 茜や秀人を巻き込むんじゃねえよ」

 明らかに戦意を喪失しているバカ西に、こっちまで勢いを削がれて、言いたい事はもっとあったはずなのに引っ込んでしまった。マジ調子狂うわ。

「分……かりました。もう二度と神谷さん達には関わらないようにします。本当すみませんでした」

 ここまで謝るって事は本気なのかもな。そう考えて、この言葉を信用してしまった私。

「分かりゃ良いんだよ。もう二度とうちらの前をウロつくなよ」

 戦意のない相手をいたぶる趣味もねえし、私はうずくまっているバカ西に背を向けて歩きだした。