宝物〜絆〜

 我に返ってバカ西を見ると、こっちに背を向ける形でまだ痛そうに身悶えている。

「てめえ、いつまでも痛え振りしてんじゃねえよ。さっきの威勢はどうしたんだ?」

 まだまだこんなもんじゃ許せねえ。茜を傷つけた罪は、こんなに軽くねえよ。

 私は少し返答を待ったけど返ってこなかった。

 様子を見に、ゆっくりと近づいて行く。

 バカ西の顔を覗き込もうとした瞬間、突然反転して蹴りを入れてきた。

「ってえなぁ。汚ねえ真似しやがって。まっ、卑怯なお前らしい攻撃だけどな」

 言いながら私はバカ西の横っ腹を思い切り蹴りつける。

 変な呻き声を上げながら一回転したバカ西を追いかけていき、髪の毛を引っ張って強引に立ち上がらせた。

 私は後頭部を押さえ付けて前屈みにさせ、膝蹴りを腹に五、六発喰らわせる。

 バカ西はそのまま前に倒れ込んだ。

「まだだよ。早く立てよ」

 こいつ、ショボいとは思ってたけど、ここまでとは。いや、さすがにそれはねえか。

 となると何かの作戦か? やられたフリして、仕掛ける隙を狙ってんのか?

 さっきの事もあるし、警戒しとかねえとな。