宝物〜絆〜

「授業始めるから、早く席につけよー」

 言いながら教壇に立つ世界史の教科担任。

「……まっ、そういう訳だ。話は後でな」

 立川は秀人を見ながら、バカ西の肩を二、三回叩いて自分の席に戻って行った。

「あいつらもバカだなぁ。あの二人に逆らうなんて」

「だよな。転入生も、来て早々、とんでもないのに目ぇつけられたな」

 後ろの方からヒソヒソと話す声が聞こえてくる。

 確かにこいつらが言うように、私が聞いた事のある立川の噂が本当なら、相当危険な奴だと思う。バカ西はどうか知らねえけど。

 そんな危険な奴に秀人が関わってしまう原因を作ったのは私な訳で、自分の浅はかさと不甲斐なさに腹が立った。

 はあ。とにかく今さら悔やんでもしゃあねえ。一旦席に戻って頭ん中を整理しよう。

 そう思った私は、秀人に声をかけて自分達の席に戻る。

 教科担任は全員が席についた事を確認して授業を開始した。

 私は秀人の机と自分の机をくっつけて真ん中に教科書を置く。

 静かな教室内では、嫌でもさっきの光景が頭ん中でリピートされる。

 立川はわざわざバカ西から話を聞いて、その後どうするつもりだろう?

 それに秀人は? 茜は?

 二人とも完全に頭に血が上っているのは見りゃ分かる。

 まさか事態がここまで急展開に進むとは。