宝物〜絆〜

　私は言い返すのもアホらしくなってきて、思わず溜息を漏らし、その場から立ち去った。

　教室に着きドアを開けると、数人がこっちを向いて静止した。

　直後、そいつらと話してた奴らも振り返り、後は連鎖反応。教室内に居る全員がこっちを向く。

　一瞬、シーンとなる教室内。しかし数秒後、一気にざわめき出した。

　うぜえ。予想はしてたけど、わざとらしすぎだろ。

　再び溜息を漏らし、自分の席に向かった。

　私の席は窓際から三列目の一番後ろ。茜の席は窓際の後ろから三列目。ちなみに茜はまだ来ていない。

　私が自分の席に着いて鞄を机にかけている時、教室中央からバカ西の声が聞こえてきた。

「あっ、大樹じゃん。珍しく早いな。ちょっと来てくれよ」

　バカ西は今、教室に入ってきた人物に声をかける。

「おう」

　それに応えた大樹と呼ばれる男は、立川大樹(ﾀﾁｶﾜ ﾀﾞｲｷ)。茜から聞いた情報によると、バカ西の高一からのツレでマブらしい。

　かなり明るめの茶髪で、耳にはシルバーのピアス。ぱっと見はちょっと恐そうだが整った顔立ちをした男なのだが、噂ではどっかの族に入っているとかいないとか。

　茜やバカ西を通して何度か遊んだ事はあるけど、実際はまだよく分からない謎の人物である。噂もあくまで噂だから真偽の方も定かではない。

　私は椅子に座って何の気なしにバカ西の席を見た。するとバッチリ二人と目が合う。

　何か嫌な予感がすんな。

　そんな事を考えていると、今度は後ろのドアが開き、茜が登校してきた。