宝物〜絆〜

「おはようさん。グッドタイミングだな。今、呼びに行こうと思ってたトコだよ」

 軽く挨拶を返して一緒に学校へ向かう。

 つーか、とうとう学校なんだよな。金曜日は強引に話を纏めたけどマジで心配だ。

 校内での噂が更に広まって、もし私への嫌がらせが始まったら、どうするか? 唯や秀人はまだしも、茜は同じクラスだから何気なく離れるとか出来ねえし。

 ああ! やっぱ心配だ。

 不安ばかりが頭を過ぎる。私のせいで誰かが傷つくのだけは勘弁して欲しい。

 気が滅入りそうになりながら、ふと東の空を見上げると、太陽が優しく微笑みかけてくれていた。私はその暖かさに、優しさに包まれて、一抹の不安が現実にならない事を願った。



   *  *  *



 太陽を背にして学校付近の桜並木を歩いていると、秀人が「ここの桜並木は本当に綺麗だよな」と言いながら自分の前に舞う花びらを手で受け止めようとしていた。

 ガキの頃にも同じシーンがあった事を思い出す。

 その日の私はどうしようもないほど落ち込んでて、それに気づいた秀人が「桜、見に行こ?」って連れ出してくれたんだっけ。

 変わってねえな、優しい笑顔もあどけない仕草も。

「ああ、そうだな」

 私も笑顔を返して、軽くなった足取りで歩く速度を速めた。