宝物〜絆〜

 うん。やっぱ関係ねえな。噂ってのは一旦広まったら、元の原因が何だろうと話が勝手に独り歩きするもんだし。とにかく、みんなに迷惑かけないようにしねえと。

 そんな事を考えながら、順にメシを平らげていく。

 その後も“カレーの隠し味は、味噌だ”とか“サラダにドレッシングは不要”などという他愛もない話をしながら秀人の作ってくれたメシを完食した。

 ちなみにサラダにドレッシングが要らないってのは私のこだわりで、野菜の味そのものを楽しむのがサラダだと思っている。まあ、どうでもいい事だけど。

「秀人、ごちそうさま。マジ美味かったわ」

「はいよ。お粗末さま」

 秀人はニコッと笑って食器を片付けるのを手伝ってくれた。

「雨、降ってきたな。今日はベランダじゃ吸えねえかぁ」

 リビングに戻り、カーテンを少し開けて残念そうに呟く秀人。

 秀人の横に並んでカーテンの隙間から窓の外を見ると、街灯に照らされて見える雨粒と室内に居ても聞こえる雨音が、相当な雨量だという事を物語っている。外に居る時に降られなくて良かった。

「そうだな。まっ、いつでも吸えるよ」

 私もベランダで吸えないのは残念だな、と思いながら灰皿をテーブルの上に置く。

「ああ。んじゃ、今日は煙草吸ったら帰るわ」

 秀人は言いながら煙草とZippoをポケットから取り出した。

 私は「おう」と返して煙草を取り出し、火をつける。

 そして煙草を吸った後、洗い物までしてくれようとしてんのを強引に断って玄関まで見送り、やる事を済ませると、とっととベッドに入った。