しかし一度気になりだしたら止まらない。髪を乾かしながら秀人の事ばかり考えていた。

 バイト掛け持ちするっつった事に対して怒ってんのか? まさか香奈の事に気付いてるとか?

 いや、まさかそれはねえだろ。

 でも……。

 考えてみりゃ秀人はエプロンの事を知ってる訳で、不審に思ってる可能性だってある。コップの件にしたってそうだ。私が余分な事言ったから香奈に何らかの疑念を抱いていてもおかしくはない。

 はあ。やっちまったなぁ。もし聞かれたら何て答えよう?

 そんな事は考えても簡単に答えが出るはずもなく、陰鬱な気持ちに支配される。

 香奈に警告されたからとかじゃなくて、内容が内容だけに、秀人には言えねえよな。

――って。ああ、もうっ! うだうだ悩んでてもしゃあねえし、実際は全く違う事で怒ってて香奈の事なんて気付いてないかもしんねえ。とにかく何で怒ってんのかだけ聞いてみるか。

 私はゴチャゴチャの頭ん中を整理すると、とっとと髪を乾かして携帯を取りに寝室へ向かった。

 寝室に置いた鞄を漁って携帯を取り出す。

 ディスプレイには着信を知らせる文字が表示されていた。

 誰だろ?

 私は携帯を操作して発信者を確認する。