これではまるで、海の上のあの城が『我が家』のようではないか。


――オイラ達のお城の方が大きいよ。塔が4つもあるもん

リナムが無邪気に自慢した。


「そうね」

ラドリーンはリナムを抱きしめた。

幽閉同然の身だったけれど、あの城は、やはりラドリーンにとっては『家』だった。

「わたし達のお城の方が立派だわ」


――うん。でも、ここ、魚の匂いがいっぱいだぁ

リナムがうっとりと言った。


「一人でうろうろしないでね。はぐれたら大変だわ」


――分かった


なんだかリナムは残念そうだ。


もしラドリーンが本当に自由な身だったら、リナムの気の済むまで一緒に、どこに魚があるか見て歩いただろう。


(いっそのこと、逃げてしまおうか)


「下船の時にはわたしが猫をお連れしますよ」


不意に声をかけられて、ラドリーンはギョッとして振り向いた。

海の城で、ドレスの中にリナムが隠れているのを見た騎士だった。

リナムが喋っているのを見られただろうか。


「猫は泳げませんからね。海に落ちたら大変だ」