猫は礼拝堂を出ると、ラドリーンの部屋の前を通り過ぎ、奥へと向かった。


いったいどこへ行くつもりだろう?


猫は時々振り返る。

ラドリーンがいるのを確かめているようだ。


間もなく、猫は立ち止まった。

後ろ足だけで立ち上がり、図書室――といっても情けないほど蔵書が少なく、棚はがら空きな部屋――の扉をガリガリと引っかく。


ドアを開けたいのだろうか、

それとも木製のドアが爪磨ぎにちょうどいいのか。


黙って見ていると、猫は恨めしげな目でラドリーンを見上げた。


――ミャア


「中に入りたいの?」


猫が頷いたように見えたのは気のせいだろうか。


「退けなさい」

ラドリーンは猫を押し退けて扉を開いた。


図書室は、少し寒かった。

書物の劣化を防ぐために、日差しの弱い方角に窓をつけているせいだ。

ラドリーンの横をすり抜けて中に入った猫がくしゃみをした。